M&Aアドバイザーの土屋範夫です。M&Aの仲介サービスを提供していると、「M&Aを行うとどんなメリットがあるのか?」というご質問をいただく機会が多いです。
あらかじめメリットを知っておけば、本当にM&Aが必要かどうかを明確な基準に基づいて判断できます。
そこで今回は、中小企業がM&Aを行うメリットについて、売り手と買い手それぞれの視点からご紹介したいと思います。
M&Aアドバイザー|土屋範夫
M&Aのメリット
M&Aで得られるメリットは、売り手と買い手で大きく異なります。
まずは、それぞれがどのようなメリットを得られるか確認してみましょう。
売り手が得られるメリット
M&Aを行う売り手が得られるメリットは、大きく次の3点に集約できます。
1つ目のメリットは、大きな収益を獲得できる点です。
M&Aは自社の株式や事業を売却する形で行うため、その対価として多額の収益を獲得できます。
具体的な金額はケースバイケースですが、大体純資産に3〜5年分の営業利益を足した金額を収益として得られます。ある程度事業を本格的に行っていた中小企業ならば、数百万円〜数千万円での売却となるでしょう。
2つ目のメリットは、事業承継の手段として活用できる点です。
株式譲渡の形でM&Aを行えば、自社の経営権を他の第三者に移転することができます。
つまり、親族や会社内に後継者にふさわしい人材がいなくても、M&Aにより会社を存続することができるのです。長年培ってきたノウハウや技術を残せる上に、従業員の雇用維持にもつながります。
3つ目のメリットは、主力事業への集中や経営再建につながる点です。
事業譲渡の手法でM&Aを行えば、経営権を維持しつつ、不必要な事業や撤退したい事業のみを売却し、主力の事業に集中できるようになります。また不採算事業を売却すれば、収益性や生産性の向上により経営状態を改善できます。
買い手が得られるメリット
一方で買い手は、M&Aにより次に挙げる3つのメリットを獲得できます。
最大のメリットは、事業の成長速度を上げることができる点です。
M&Aを行えば、売り手企業が持っているノウハウや技術、取引先などを一度にまとめて獲得できます。そのため、時間やコストがかかる新規事業の立ち上げや海外進出などをスピーディーに実現可能です。
2つ目のメリットは、経営戦略の遂行に伴うリスクを軽減できる点です。
多角化や海外進出などは、不確実性要素が高く失敗する可能性が高い上に、失敗すれば費やした膨大な時間やコストが無駄となります。一方で参入したい分野や市場ですでに成功している事業や会社を買収すれば、成功している状況下でスタートできるので、大幅にリスクを軽減できます。
3つ目のメリットは、事業規模を拡大できる点です。
M&Aにより、既存事業に必要な工場やノウハウ、人材などを獲得すれば、短期間で大きく事業規模を大きくできます。事業規模の拡大により、コストの削減や市場シェアの増大といったメリットを得られるでしょう。
特に売り手企業とのシナジー効果が発揮されれば、それぞれの事業を別々に行っている時よりも、大きな利益を得られる可能性もあります。
M&Aのデメリット
ここまでご紹介したように、M&Aを行うと多様なメリットを得られます。
しかし注意していただきたいのは、M&Aにはメリットと同時にデメリットもあることです。
デメリットを知らずにM&Aを実施すると、想定外の出費や事態が発生するリスクがあります。
あらかじめ下記で紹介するデメリットも考慮した上で、M&Aを活用するかどうか検討していただければと思います。
売り手が注意すべきデメリット
売り手がM&Aを実施するにあたっては、2つのデメリットに注意しなくてはいけません。
1つ目のデメリットは、いつまで経っても買い手が現れないリスクがある点です。
M&Aを実現するには、自社に魅力を感じてくれる買い手が現れる必要があります。しかし債務超過や明確な強みを持たない企業は、いつまで経っても買い手が見つからないケースがあります。
スムーズに買い手が見つからないと、事業承継や経営再建を実現できないだけでなく、仲介会社に支払う手数料が無駄となるおそれがあります。
そうならないためにも、強みを強化したり債務超過を解消するなどして、買い手にとって魅力的な企業になるように注力しましょう。
2つ目のデメリットは、希望する条件で売却できないケースがある点です。
たとえ買い手が見つかったとしても、必ずしも希望の金額で売却できるとは限りません。事業や財務状況に魅力がないと、想定よりも安い値段でしか売却できないリスクは高くなります。
1つ目のデメリットに向けた対策と同様に、債務超過の解消や強みの強化などが欠かせません。
買い手が注意すべきデメリット
一方で買い手は、次に挙げる2つのデメリットに十分な注意を払いましょう。
もっとも注意すべきは、想定していた効果を得られずに、多額の損失が生じるリスクがある点です。
そもそもM&Aは、事業規模の拡大や成長の加速などを「期待して」、事業や会社を買う行為です。言い換えると、M&Aを行ったからといって、100%利益の増加やコストカットなどのメリットを得られるとは限らないのです。
想定していた効果を得られなければ、M&Aに費やした多額の買収資金は無駄となり得ます。最悪の場合には、「のれんの減損処理」が必要となり、多額の損失が生じるかもしれません。
上記のような事態を避けるには、デューデリジェンスを入念に行い、買収可否の判断や買収金額の決定を実施するのが効果的です。
2つ目のデメリットは、売り手企業との統合が円滑に進まないリスクがある点です。
M&Aによるメリットを得るには、売り手と買い手の間で、従業員の処遇やITシステム、経営方針などを上手く統合する必要があります。統合が上手くいかないと、従業員のモチベーションが低下したり、業務の進行に支障をきたす事態となり得ます。
このリスクを軽減するには、あらかじめ従業員の働き方やITシステム、経営方針などをどのように統合するかを計画しておくのが重要です。
また売り手の従業員に対して、今後の処遇や働き方を入念に説明し、あらかじめ不安を取り除くのも重要です。
メリットとデメリットを踏まえてM&Aを行おう
今回ご紹介したように、中小企業のM&Aにはあらゆる点でメリットがあります。
十分に対策を練っておけば、あらゆるデメリットやリスクにも対処できるでしょう。
M&Aについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
参考:中小企業のM&A【メリットや手順、成功させるポイントを解説】 M&Aポート
M&Aアドバイザー|土屋範夫